MDX．最近耳にしませんねえ．
X68000時代はあれほど発展し，BBSにデータが溢れたというのに，web上ではなぜか全然見かけない(というと嘘になるのだが)．
確かにゲームからの解析コンバートもの等も多く著作権的にヤバイのも多かったが，オリジナルデータも多く，ファンも多かったはずだ．なのに，何故かweb上ではその欠片を探すことさえ困難な状況だ．
いくら完全に時代錯誤となってしまったマシンの音楽データといえど，そんなすぐに見捨てられるような軽薄なモノでは決してなかったと思う(SIDだってProTrackerMODだってSPC(?)だって未だに頑張ってるぞ!!)．
うーーん，みんなシャイなんですかねえ？(違うって

MDXとは

X68000の音源である YM2151(通称OPM 4オペFM8ch) と MSM6258V(4bitADPCM 音量音程変化不可)を制御する音源ドライバMXDRVのデータの事を一般に指します(Music Data of mXdrvの略称だったと思う)．当初はFM8chとADPCM1chでしたが，PCM8というソフトウェアで8chまで拡張してさらに音量変化までをサポートするという当時から言えば驚異的なフリーソフトの出現で，基本的にFM8chとADPCM8chの計16ch(MIDIで言えばパート)を扱えるようになっています．
当時のパソコンでは圧倒的なサウンド能力でした(ただFMTOWNSがFM6ch+ADPCM8chだったのが例外，けどTOWNSの方が後発だし〜).その中で独自のX68000内蔵音源文化が開花したのでした．
入力の基本は当然MML．あのCDEFGABを基本にひたすらテキストエディタで打ち込む方式です．ビブラートやトレモロ，ポルタメント，オートベンド等をサポートする等結構強力なものでしたが，他人から見れば文字の羅列というか暗号．FM音源の音色も40個程度の数値をちまちま変更していくことによって求めるという根気の要る作業．今では到底考えられない作成環境だったと言えます(といっても今でもZMUSICで凄い曲作ってる人いるからやっぱMMLは偉大だ)．

その後ソフトバンクからZMUSIC，電波新聞社からはNAGDRV等の機能的には完全に上の音源ドライバが登場しますが，結局それ以降もユーザのデータ作成環境はMDXが基本のままでした．ただ，ZMUSICはMIDIが扱え(NAGもMIDIは扱えた)ライセンスフリーで高速ということもあり，第２の標準ドライバとなった気もしますが．あ，もちろん他にも無数のドライバが存在していました．だけど成功したといえるのはMXDRV,MADRV,ZMUSIC,MCDRVくらい?

というわけでMDXはX68のサウンドの代名詞なわけです．
詳しくはPI.氏のMDXを見ると良いです．いくつかデータも手に入るし！

出回っているデータ

それで，どんな種類のデータがあるのかというと，ゲーム系が多いです(X68erにはやたらゲーマが多いからかな)．
コピーもの，X68のゲームからの吸い取り，ゲーム機からの吸い取り等とにかく多い．その反面MIDI等では多い邦楽とかその辺の曲は少ない気がします．単に僕が持ってないだけかもしれませんけど．
最近のゲームは殆どPCM音源オンリーですが，昔はFM音源で音を出すのが当たり前だったため，頑張ればX68上でクリソツなデータ(もしくは本物を越えた)が出来あがった背景も有るかもしれません．

で，コピーやオリジナルものもアツイんですが，真骨頂とも言えるのが吸出しコンバート系．まずROMからデータを吸出し(これだけでも凄いと思う)，そこから音楽データと音源ドライバを抜き出し，音源ドライバを解析し音楽データのフォーマットを暴き，MDXに変換するという，もう僕から見れば，そこまでやるかー！って感じですね．
だって，例えばメガドラから吸い取ろうとしたらメガドラのCPU(MC68000)，メガドラのサウンドCPU(Z80)の逆アセンブルコードについて完全に解析しきる知識と経験が無くては話にならないと思うし，音源チップとどこのポートで繋がっているか等の内部資料も要りますし，メガドラのサウンドチップの詳細が必要です．そしてMDXのファイル構造とコンバートするプログラムも必要です．
はっきり言ってソフトにクラックパッチを当てるとかそんなんとはまるでレベルが違います．しかもその技術力を音楽データに傾けるその無駄とも言えるパワー．いや，ホント凄い．

と，どうでも良いことを書いてきましたが，それだけの理由なら僕もとっくに聞き飽きてるでしょう．なぜ未だにMDXとか聴く事有るの？と聴かれれば，やはりX68000内蔵音源の限界を超えたと思えるくらいの気合の入ったデータが多いからです．
いや，よく「これがまじでFM音源かいッ！」と言いたくなるようなデータ多いです(と思ったら実はADPCMだった．なんてことはよく有るけど(^^;;;)．というかFM音源ならではの巧い音色とか，微妙なピッチベンドとかやられるともうクラクラというか，なんかそういうそこはかとない趣があるんです．まあ，単にそれって思い出じゃん? なんて考えることもありますが，深く考えないことにします．
いや，だけどやっぱ誰が何と言おうとFM音源はいいですよ．うん，文化の極み．

演奏方法

一昔前まではX68000での 本家MXDRV , 上位互換のMADRV , ZMUSIC + MZP (MCDRVは次点?)等くらいしかまともに原曲再生できるものは無い状況だったと思います(これでも厳密に言えばMXDRVだけ，しかもverによる)．PC9801版のMXDRVもありましたが，僕が試したところ洒落にならないくらい酷かった覚えが有ります(ドライバ以前に86音源とは仕様が違うので仕方ないですが)．FMTOWNS版もあったらしいですが，これもFMのチャンネル数が足りないので完全再生は不可能でしょう(聴いたこと無いので詳細は不明)．

実際僕もまさかX68000以外の環境でまともに再生することは不可能じゃろうて，と思っていたのですが最近1,2年で事情が変わってきました．
まずEX68(Win用X68エミュ)用の超高性能なX68000サウンドエミュレータ X68Sound.dll の登場．
ADPCMはともかくとして，OPMの再現度が鬼．MAMEとかGENECYSTのOPMエミュもそこそこいいけど，やはり細かいLFOだとかその辺のマイナーな処理はいい加減(もしくは未サポート)なのに対し，X68Sound.dllは完全再現するかの如く緻密に実装(してると思われる)．僕なんか実機と区別がつきません．むしろ実機よりWinマシンの出力環境が良い為かクリアにさえ感じられます．
その代わりCPUパワーを猛烈に消費しますが，全くノープロブレム．K6-2/300を使っていますが，普通に使う分には負荷は殆ど感じないでしょう．ただP133で試したら22kHzで相当苦しかった覚えがありますので，CPUパワーが無い人は速攻買い換えましょう．

さて，それでは再生ソフトはというと，間違い無くMDXDRV(Win用)がお勧めです．
何となくグラフィカルなMDXWINというのも有りますが，再現度に雲泥の差が有るのでMDXDRVの使用を強くお勧めしておきます(グラフィカルな環境を望むなら実機でmmdspを動作させるか，EX68上でmmdspがベストでしょう)．
なお，MDXDRVを用いる場合はAFXとdrvselを組み合わせると結構快適です．

他にはあのGORRY氏が移植したMXDRV for Win32なるものがあります．これはX68のMXDRV.Xを逆アセンブルしてCにコンバートしたもので，再現性は云うまでも無く完璧．
MXVというステータスディスプレイ付のセレクタも置いてあり，これもかなりお勧めです．
ただ，mxdrv ver2.06+17ベースなので+16ベースのMDXDRVの方が一般的なデータとの親和性は高いかもしれません(+16ベースのデータが大半なのかな? 詳細不祥)．って殆どのデータは問題無いと思いますけど．

MDXが再現できるだけでも驚きなのですが，なんとZMUSIC(V1/2)も最近は再現可能ときています．
ZMDRIVEというソフトなんですが，これにはビックリしましたね．何と言ってもZMUSICはX68000至上最強の音源ドライバでFM8ch+ADPCM8ch+MIDI32ch(違うかも)に対応していたり，MMLもMXDRVより遥かに高機能なので．流石にまだまだ完全再現には至ってないですが殆どのデータは問題無く再生できるようです(OPMD系はまずいっぽい．ADPCMが小さい)．
FM+ADPCM+MIDIが同期して演奏されたときは本当にビックリしました．
あと曲データ持ってないので試してないですが，マーキュリーユニット対応とかのプラスαに涙出そう．
作者様には何とお礼を言ったら良いか分からないです．

データは何処に(非公式版)

やはりここはデータの紹介もしておくべきだろうということで，多少置いておきます．
一部吸出し系はヤバそうな気もしますが，基本的に古いデータばっかなので，もうそろそろ時効なんじゃない？(どこが?) ということで誠に勝手ながら置きます．
それと，当時の僕は展開して元アーカイブを紛失する傾向にあったので１度展開されたものを再梱包してあります．そのためファイル一部紛失してるかも(^^;;;;(それとタイムスタンプが新しくなってる!?) ごめんなさいm(__)m



Title	Composer	File	Comment
Ko-Window APP集3 theme music	LEEX	MDX 33KB Lzh	自分でもいきなり渋いところ突いてくるなあ，って感じなんですが，多分これが僕が初めて聴いたMDXなので． 最初これしかなくて，どないしよう．と思いましたよ．
Bare Knuckle より The Super Threc	CAROL	MDX 35KB Lzh	あの古代祐三の名曲をCAROL氏がアレンジしたもの．BARE KNUCLKEやったことないくせに言うのもなんですが良い曲です．
Bare Knuckle より Name Entry	S.Mishy	MDX 4.7KB Lzh	口笛が最高．雰囲気良すぎ．
DIRT FOX より RUNNING-UP	ChaMa	MDX 224KB Lzh	アドリブが気持ち良いです．
CASIOPEA NAVIGATORS	法男	ZMS 42KB Lzh	バッチリ雰囲気出てます．クオリティー高し．MIDIも若干使用していますが無くても全く問題無し．(電脳倶楽部より)
電気GROOVE 電気ビリビリ	Css-DEF	MDX 65KB Lzh	僕はこのMDXで初めて電グルを知った(ぉ
SPACE HARRIER さわやかmix	TOMSAN	MDX 31KB Lzh	X68界のラッパーとして有名だったTOMSAN．ADPCMをバリバリに使ってMDXでラップしているのを聴いたときは驚愕しました(しかも開発環境が1Mだったというから凄い)．しかしこういうオツな曲も作っていたりします．
GRONDZERO III SLASHGABBA	Zoroaster	ZMS 171KB Lzh	なんとGABBAです．ADPCMオンリー．GRONDZEROいかす〜〜〜〜〜〜(手に入れた当時はこの曲理解できなかったが)
METROID より ENDING	池田 修	MDX 30KB Lzh	池田 修氏もMDXでは有名な人．メロディアスな曲が上手いです．
Rance1 より No.14 (On a Rance Tip) X68030_49Mix	unicco	MDX 120KB Lzh	このremixは...ありですか？(笑) PCMループの途切れが惜しい． 原曲(全曲cv)はここ．
Genocide2 全曲集46曲	cv.by DIS	MDX 112KB Lzh	X68000不朽のアクションゲームGenocide2のサウンドをDIS氏がコンバートしたもの．いやあ，ZOOMがX68で出した中ではGeno2がやっぱ最高ですね(音楽もゲームも)．X68使った事ある人なら絶対キープしておきたいところ．
ときめきメモリアル 全曲集(SCC版)100曲	斎藤彰良	MDX 90KB Lzh	MSXer御用達のSCCでときメモというマニアックさも凄いが，デキも凄い．見事にSCCがマッチしているのが怖いくらい．
SORECIAN PC88SR版 全曲集	cv.by MFS Soft	MDX 109KB Lzh	これを無くして昔のGMは語れない!? FALCOM黄金時代の超名作SORECIAN．FM3ch+PSG3chとは思えないデータの数々に圧倒です．X1版も有り．
BATTLE GAREGGA 全曲集	cv.by さんたるる	MDX 409KB Lzh	もう時効だと思うので(爆)．doc読めば分かりますが，かなりムフフなデータです．CD版よりクオリティ高いです．ちなみにゲーセンでゲームをするようになったのはこのMDXがきっかけ(ぉ
SION 全曲集	西川 善司 cv.by HALLY'91	MDX 78KB Lzh	Oh!XおまけDISKに付いてきたゲーム．僕は無茶苦茶ハマりました．ゲームにも音楽にも．
g(Ａ)bber conspiracy	OCHO	ZMS 533KB Lzh	某宗教団体のGABBA第2弾(他にもjungleがあったりする)．ただのギャグとも言えるが，GABBAとしてもクオリティが高い．ただし洗脳されないように気をつける必要があります(笑)．
生中継68K 全曲集	cv.by RUPA	MDX 107KB Lzh	異様にリアルな野球ゲーム生中継68K．KONAMIなんですが例に漏れず素晴らしい音楽．本当に野球ゲームの音楽？と思ってしまうようなフュージョン系が多い．
出たな!!ツインビー X68版 全曲集	cv.by RUPA	MDX 166KB Lzh	速攻移植が嬉しかったなあ．基盤とは音源が異なりますが，巧くFMにアレンジしたのが見事．しかし，出たツイには名曲が多い(自分的に)．
悪魔城ドラキュラ X68版 全曲集	cv.by DIS	MDX 172KB Lzh	ある意味X68最後の楽園ともいえたこのゲーム(ジオグラ除く)．音楽もKONAMIの最後を飾るのに相応しいデキか．
Snatcher PC88版 全曲集	by Y.ROMI&YST	MDX 47KB Lzh	THEME OF JUNKERがいい感じ．KOBE好きは必携(あまり関係無い)．
Dragon Spirit X68版 全曲集	cv.by Yatsube	MDX 207KB Lzh	(個人的に)余りにも感慨深いこのタイトル．音楽もまた然り．Dragon Spirit IIのPCMドラムでアレンジされたのも素敵だけど，やっぱドラスピにはFMドラムが似合う(偏見)．
Thunder Force IV MD 全曲集	cv.by Beauty Planets	MDX 144KB Lzh	FMギターがアツイ． 超連射のBGMに使ってたので，嫌というほど聴きました(笑
Ys3 X68版 全曲集	cv.by Yatsube	MDX 115KB Lzh	X68版のYsは1,3共に賛否両論でしたが，僕は両方ともあれで良かったと思います．音楽のアレンジも良し．(68版しかやったことない僕が言うのもなんですが(ぉ )
METAL HAWK 全曲集	by Veyrlen	MDX 121KB Lzh	ゲームはやったことないけど，MDXはよくX68で聴いていました．それだけ名曲ってことですね．他に斎藤彰良氏とOh!Xの進藤慶到氏が全曲集を作っています．


こんなの書いといてあれですが，僕はそんなにデータを持っていなかったりします．
誰かお恵みを(^^;;;

解析する人々

このように繁栄したmdxではありますが，その仕様の古さ，つまり性能の低さは完全なコンバートの妨げとなりつつありました．そもそもどんなものでも完全に受け入れることができるフォーマット等存在し得ないのです(仮に存在するとしたら特殊コマンドだらけか．wavとか言わないように)．で，その筋の人達が走っていった方向はmxdrvの改造であり，さらにドライバの移植なのです． ROMから抜いてドライバを解析してmdxへ変換するのではなく，ドライバを68のコードに落として直接YM2151をドライブしてしまおう，というわけです．当然再現性100%(割り込みやクロック誤差除く)．
「それだとmmdsp使えないから嫌だー」等という声も聞こえてきそうですが，直接I/Oを操作するのではなく，とある常駐ソフトを介すことによりステータスを表示することが可能だったりします(これがまた凄い...)．その方式は発展していって様々なサウンドをエミュレートしていったということです．最終的にはPCMを多用するので事実上060専用だったとか．
で，その流れは今も続いていて... こういうのは表に出てこないので知りませんが，Win用に幾つかサウンドエミュは存在する様です(この流れとは関係無いのもあるだろうけど)．
今となってはSoundだけのMAME+ちょっとしたUIを作れば結構逝けてる気もしますが，誰かやりませんか？(ってあるにはあるけど)